💡
[要約]
歯ぐきの骨(歯槽骨)が不足している方に向けて、骨造成(骨移植)を伴うインプラントが必要になる理由、成功率の目安、主な術式、回復期間、よくある誤解までを整理しました。

「インプラントをしたいのに、骨移植が必要と言われた…?」

無歯顎の患者が失った歯を気にしたり、不安そうにしている場面

初めて聞くと、誰でも驚きます。

「本当に必要?」「痛みはどれくらい?」「ちゃんと定着するの?」といった不安が次々に浮かぶのも自然なことです。

特に、長期間歯を失ったままにしていると、歯ぐきの骨(歯槽骨)と歯ぐきがやせてしまい、インプラントが難しくなることがあります。

そのときに不足した骨を補う工程が、**骨造成(骨移植)**です。


1. 骨造成(骨移植)インプラントが必要になる理由

歯槽骨が吸収していく前後を比較した画像

歯を失ってから時間が経つと、歯ぐきの骨(歯槽骨)は少しずつ減っていきます。

骨が減った状態では、インプラントをしっかり固定しにくくなります。

インプラントは、十分な量の健康な骨に囲まれていることが基本条件です。

そのため、インプラントの周囲で「縦(高さ)」「横(幅)」の骨量を増やす目的で骨造成を行うことがあります。

また、抜歯と同時にインプラントを行うケースでは、抜歯後に残る穴(抜歯窩)を埋め、形を保つ目的で骨造成を行う場合もあります。


2. 骨造成後の成功率の目安とメリット

骨補填材を挿入している場面

研究によっては、骨造成後のインプラントの成功率が**92〜97%**程度と報告されています。

また、長期経過の観察でも周囲骨の変化が比較的小さく、安定性が高いとされるデータもあります。

骨造成に用いる材料には、自家骨・同種骨・異種骨・合成骨など複数の選択肢があり、多くの報告で成功率は90%を上回るとされています。

ただし、成功のしやすさは、術式の適合性だけでなく、患者さんの全身状態(基礎疾患のコントロール等)にも影響を受けます。


3. 代表的な骨造成(骨移植)の方法

骨が不足している場所や不足の程度は人によって異なるため、適した術式も変わります。ここでは代表的な方法を紹介します。

1) 抜歯窩保存術(ソケットプリザベーション / Socket Preservation)

抜歯窩保存術の手順を示す画像

歯を抜いたあと、その部位の骨がへこむ(やせる)のを防ぐために、骨補填材を入れ、コラーゲン膜などで覆って縫合する方法です。

将来のインプラントに向けて、良好な骨の条件を保ちやすくします。

2) 上顎洞底挙上術(サイナスリフト / Sinus Lift)

サイナスリフトの前後イメージ

上顎の奥歯の上にある空洞(上顎洞)の骨が薄い場合に用いられる方法です。

歯を失うと上顎洞が下がるように近づき、インプラントを入れる高さが不足することがあります。その際に骨を補って、必要な高さを確保します。

本文では「上顎洞が大きい方が多く、上顎奥歯で必要になるケースが多い」と説明されています。

上顎洞底挙上術を行わずにインプラントを埋入すると、骨による縦方向の支持が十分に得られず不安定になったり、上顎洞感染により耳鼻咽喉科領域の問題につながる可能性がある、とされています。

3) 骨誘導再生法(GBR:Guided Bone Regeneration)

GBRによる骨造成の様子

骨が部分的に欠損している場合に、遮断膜(メンブレン)などを用いて骨が再生できるスペースを確保・維持し、新しい骨の形成を促す方法です。

歯ぐきなどの軟組織が再生スペースに入り込むのを防ぎ、骨が育つ環境をつくることが要点です。


4. 骨造成後のインプラントの進め方

骨造成インプラントの全体プロセス

通院回数を抑える目的で、骨造成とインプラント埋入を同時に行う「同時埋入」を希望されることもあります。

ただし、骨量が大きく不足している、あるいは状態が良くない場合は安全性を優先し、骨造成後に3〜6か月程度待って新しい骨が十分に形成されてから埋入する「段階的埋入」が適切となることがあります。


5. 骨造成に関するよくある誤解

骨が形成された後、インプラントを埋入する場面

「MRIやCTだけで、骨造成が必要かすぐ判断できる?」

→ 画像は重要な参考情報ですが、最終的には経験ある医療者の臨床判断が重要です。

「骨造成をすると、必ず大変な思いをする?」

→ 骨造成を行うと治療期間が長くなる可能性はあります。

ただし本文では、痛みや不快感は骨造成そのものよりも、術式上の歯ぐきを開いた時間や範囲と関連しやすい、と説明されています。

「骨造成インプラントは副作用が強い?」

→ 多くの骨造成は安全に進められ、感染や合併症の頻度は低いとされています。指示を守り、継続的に管理することでリスクを下げられる可能性があります。


6. よくある質問(FAQ)

Q. 骨造成(骨移植)インプラントの痛みは強いですか?

通常は局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんど感じないことが多いとされています。術後は腫れや痛みが出ることがありますが、処方される鎮痛薬でコントロールできる場合が多く、日常生活に早期復帰される方も少なくありません。

Q. 骨造成(骨移植)にかかる期間はどれくらいですか?

平均して3〜6か月程度が目安とされ、移植した骨が安定する期間を含みます。骨の状態によっては、骨造成と埋入を同時に行える場合もあります。全体計画は診察・相談のうえで決まります。

Q. どんな骨材料を使いますか?

患者さんの状態により、自家骨(ご自身の骨)、同種骨(人由来)、異種骨(動物由来を加工)、合成骨(人工)などから選択されます。

Q. 骨造成インプラントの副作用はよく起こりますか?

本文では、感染や失敗の頻度は低く、安全な術式として分類されると説明されています。精密な診断、熟練した手技、適切な術後管理がそろうことで、合併症の予防につながります。

Q. いつ骨造成インプラントを始めるのがよいですか?

歯を失った部位は時間とともに骨が吸収されやすくなるため、可能であれば早めに治療計画を立てることが望ましいとされています。骨吸収が進む前に開始できると、より良い条件が得られる可能性があります。

A patient consulting with the medical team for a successful dental implant procedure
最後に
骨造成(骨移植)は単なる補助的な処置ではなく、インプラントを長く安定して使うための、いわば「土台づくり」です。 不安を抱えるよりも、ご自身に必要な方法を正確に理解することが何より大切です。 経験豊富な医療者と十分に相談しながら進めれば、納得のいく結果につながる可能性があります。

出典

  • Pjetursson, B. E., et al. (2014). A systematic review of the survival and complication rates of implant-supported fixed dental prostheses. Clinical Oral Implants Research, 25(6), 725–742.
  • Korean Academy of Oral and Maxillofacial Implantology. (2023). Clinical guideline for bone grafting in implant dentistry.
  • Esposito, M., et al. (2012). Interventions for replacing missing teeth: augmentation procedures of the maxillary sinus. Cochrane Database of Systematic Reviews, (5).

※ 本ブログのすべてのコンテンツの著作権はメディハイに帰属します。
無断での複製・配布・二次加工を厳禁し、違反が確認された場合は事前の警告なく法的手続きを行います。

あわせて読みたい

ゆるい入れ歯で悩んでいる方は必見です
ゆるい入れ歯が外れやすい・痛い・噛めないと感じる方へ。セルフチェックで原因のサインを確認し、放置リスク(骨の吸収など)と、2〜4本のインプラントで入れ歯を固定する「インプラント義歯(オーバーデンチャー)」の特徴を分かりやすく解説します。