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[要約]
糖尿病(糖尿病)の基礎疾患がある方の白内障手術は、単に混濁した水晶体を入れ替えるだけ ではありません。眼の奥深くにある網膜疾患の状態まで確認すべき、繊細なプロセスです。血糖 値の確認にとどまらず、精密な網膜評価を総合して行うことで、より安全な視力回復が期待でき ます。

「糖尿病があると、眼の手術はずっと複雑で危険になるのでしょうか?」

An elderly patient checking their blood sugar levels at an eye clinic

診察室を訪れる多くの糖尿病(糖尿病)の基礎疾患をお持ちの方が、実際によく口にされる質問です。糖尿病合併症への不安から手術を先延ばしにし、視力低下を放置してしまう方も少なくありません。ですが臨床現場では、手術の安全性を判断し時期を決めるための、より明確な基準があります。その基準を知ることで、漠然とした不安を減らし、合理的な備えが可能になります。

糖尿病(糖尿病)患者さんの白内障手術の可否を判断する際、最初に確認するのは血糖値そのものではありません。表に見える白内障のさらに奥、眼の最も内側にある網膜が手術の過程に耐えられるかを評価することが、治療全体の方向性を決めます。


1. 糖尿病があると白内障手術がより危険になる「本当の変数」とは?

An illustration comparing a normal retina with diabetic retinopathy

糖尿病(糖尿病)があるという事実だけで、白内障手術が一律に禁忌になったり不可能になったりするわけではありません。実際、糖尿病(糖尿病)のある方でも手術後に良好な視力改善を経験されるケースは多くあります。ただし結果を左右する本当の変数は、「糖尿病網膜症」や「糖尿病黄斑浮腫」といった網膜合併症を伴っているかどうかです。

見え方がかすむと、まず白内障を疑いやすいものです。しかし糖尿病(糖尿病)患者さんの視力低下は、単なる水晶体混濁だけが原因ではない可能性があります。糖尿病(糖尿病)は長い時間をかけて眼の奥の微小血管を障害し、中心視野を担う黄斑を腫れさせることもあります。

眼をカメラに例えることができます。白内障はカメラ前方の「レンズ」が濁った状態です。一方、糖尿病網膜症は後方の「フィルム(イメージセンサー)」が傷んだ状態に近いと言えます。レンズを新しいきれいなものに交換しても、すでに後方のフィルムが損傷していれば鮮明な写真は得られません。これが、白内障手術前に「レンズ」と「フィルム」を同時に評価する必要がある理由です。


2. 糖尿病白内障手術の前に必ず確認する検査:散瞳眼底検査とOCT

An elderly patient undergoing an OCT exam

糖尿病(糖尿病)患者さんの術前評価は、単に「手術が可能かどうか」だけを確認する工程ではありません。今後「どの順序で、どのように経過観察していくか」を決めるための、いわば設計図づくりです。その設計図を描く中核となるツールが「散瞳眼底検査」です。瞳孔を広げて網膜全体を直接観察し、糖尿病網膜症の有無を確認する重要な出発点になります。

糖尿病網膜症は大きく非増殖糖尿病網膜症と増殖糖尿病網膜症に分かれ、非増殖は進行度により計3段階に区分します。増殖は網膜に異常な「新生血管」が生じる状態を指します。これは網膜・硝子体出血や膜増殖を引き起こし、将来的に手術を行っても回復が難しい重度の視力低下につながり得ます。そのため、増殖へ進む前の非増殖段階で、網膜レーザー治療や眼内注射治療などにより、病変のさらなる悪化を抑えることが治療の要点です。

散瞳眼底検査に続いて、網膜を断層で撮影する「OCT(光干渉断層撮影)」が併せて必要になる場合があります。これは眼の微細な構造異常や、視力に大きく影響し得る黄斑浮腫の有無を正確に捉えます。初期の網膜合併症は、自覚症状がないまま静かに進行することが多いのが実情です。実際に韓国の報告によれば、40歳以上の糖尿病(糖尿病)患者さんにおける直近1年の眼底検査受診率は29.5%にとどまっています。したがって症状がなくても、術前の精密検査で眼の奥のフィルム状態を正確に診断することで、術後経過をより合理的に見通すことができます。

結局のところ、散瞳眼底検査とOCTは、レンズを交換する前にフィルムの状態を点検する工程であり、この2つは決して切り離せません。

✅ 手術前の必須確認チェックリスト

  • 直近1年以内に散瞳眼底検査で糖尿病網膜症の有無を確認したか?
  • 視力低下の原因が白内障だけなのか、網膜合併症を伴うのか説明を受けたか?
  • 必要に応じて黄斑浮腫を確認するためのOCT検査計画が立てられているか?

3. HbA1c(ヘモグロビンA1c)だけ下げればよい?「数字ひとつ」が見落とすもの

An infographic highlighting HbA1c, fundus condition, and long-term follow-up tracking

HbA1c(ヘモグロビンA1c)は、直近2〜3か月の平均血糖を示す指標で、手術前の全身状態を把握するうえで重要な役割を担います。しかし、手術リスクを「HbA1cの数値ひとつ」だけで断定するのは難しい面があります。大規模な臨床研究でも、特定の数値単独で術後合併症リスクが直ちに決まるわけではない、という根拠が報告されています。

だからといって、血糖管理が重要ではないという意味では決してありません。血糖管理は、手術という精密作業において作業台の揺れを抑えることに相当します。血糖コントロールが不十分な糖尿病(糖尿病)患者さんでは、白内障手術後に角膜内皮細胞の浮腫が生じる確率が、健常者に比べて高いとされています。多くは薬物治療で改善しますが、これは術前の血糖コントロールがなぜ重要かを示す代表的な理由です。

そのため手術時期を決める際には、断片的な数字ではなく、以下の3つの要素を総合的に並べて評価します。

確認項目 評価目的(確認の理由) 手術計画への影響
全身状態
(血糖変動、合併症)
手術前後の感染リスクおよび回復力の確認 他科との連携(対診)の必要性の判断、適切な手術時期の調整
眼底状態
(網膜・黄斑浮腫の有無)
視力低下の複合的な原因の把握 網膜治療の先行要否の決定、期待される視力範囲の設定
長期フォローアップの
可能性
手術後の変化の早期発見および対応 通院間隔の設定および長期的な網膜モニタリング計画の策定

手術を控えて無理に血糖を急激に下げることは、個々の全身状態によってはかえって負担となる可能性があります。数字に縛られて手術を諦めたり無理をしたりするのではなく、内科と眼科の緊密な連携診療により、手術のタイミングを安全に設定することが望ましいです。


4. 多焦点レンズの選択を、糖尿病患者さんではより慎重に考える理由

An image of various intraocular lenses (IOLs) being held with tweezers

白内障手術を決めると、単焦点・多焦点など眼内レンズの種類を選ぶことになります。近年は、老眼鏡への依存度を下げる多焦点レンズへの関心が非常に高まっています。しかし糖尿病(糖尿病)患者さんの場合、一般的な状況よりもレンズ選択をいっそう慎重に行う必要があり、その前提条件は「網膜状態」であるべきです。

多焦点レンズは、入ってくる光を複数に分けて焦点を合わせる光学設計です。光を分けて使うため、神経組織である網膜(フィルム)が十分に健康であることが、その利点を活かす条件になります。もし糖尿病網膜症の治療歴があったり、黄斑がわずかに腫れていたりすると、糖尿病性浮腫が生じた黄斑部網膜が、多焦点レンズによって分散された光を適切に捉えられず、術後視力が期待に届かない可能性があります。

そのためレンズ選択では、「どのレンズが便利か」を問う前に、「いま自分の網膜が光を十分に受け止められる状態か」を先に確認する必要があります。眼底が非常に安定していれば選択肢は広がりますが、網膜合併症の所見が見られる場合は、光を一点に集める単焦点レンズのほうが、見え方の質という観点でより無難で安全な選択となり得ます。


5. 白内障手術後「1年」が重要な理由:網膜は静かに変化し得ます

An infographic emphasizing the necessity of a 1-year follow-up after cataract surgery

糖尿病(糖尿病)患者さんにとって白内障手術は、手術室を出た瞬間に終わる短期イベントではありません。医学的には、術後少なくとも1年間の経過観察を終えた時点で、はじめて治療が完成すると考えます。

関連研究を総合すると、手術時に生じる微細な炎症反応が、眼の奥の網膜血管に影響し得ることが示唆されています。その結果、術後1年以内に既存の糖尿病網膜症が進行したり、黄斑浮腫が新たに出現したりする可能性が報告されています。レンズ交換という刺激によって、落ち着いていたフィルムが再び刺激を受けることがある、ということです。

手術直後はクリアになった視界に満足していても、数か月後に中心視野がゆがんで見えたり、かすんだりする場合は、網膜変化のサインかもしれません。したがって海外在住や多忙な予定などで、術後のフォローを中断せざるを得ない状況がある場合は、手術時期そのものを医療者と再検討することが安全です。術後管理は副作用を防ぐための受け身の防御ではなく、視力を守るための積極的な治療プロセスの一部です。

✅ 術後1年のフォローアップチェックリスト

  • 術後1か月、3か月、1年単位の長期的な網膜フォロー検査(眼底/OCT)の予定があるか?
  • 視野のゆがみや中心部のかすみなど、網膜異常症状が出た際に速やかに対応できるか?
  • 眼科のフォロー予定に合わせ、内科での安定した血糖管理目標を連動させているか?

6. よくある質問 (FAQ)

Q. HbA1c(ヘモグロビンA1c)が高いと、白内障手術はすぐ延期すべきですか?

HbA1cという数字ひとつだけで、手術の可否を断定しません。血糖指標は重要ですが、全身の安定性と眼底所見(網膜/黄斑)、術後の経過観察計画を総合的に評価し、内科との連携のもとで手術時期を慎重に調整することが優先されます。

Q. 術前の眼底検査とOCTは、なぜ必ず受ける必要があるのですか?

糖尿病(糖尿病)の基礎疾患がある方では、水晶体混濁(白内障)以外にも、症状がないまま視力を低下させる網膜合併症が併存することがあります。検査で網膜の点状出血の範囲が広い、あるいは黄斑浮腫が見つかった場合には、網膜レーザーや眼内注射により糖尿病網膜症がさらに悪化しないよう、状態に応じた対応(治療を含む)が検討されます。術前に眼底検査と必要に応じたOCTを行い、手術の順序を決め、レンズ選択のための必須の設計図を描くためです。

Q. 白内障手術後、視力が再びかすむことはありますか?

手術過程で生じる微細な炎症や刺激が眼の奥に影響し、糖尿病網膜症が進行したり黄斑浮腫が出現したりすることがあります。そのため手術当日の結果だけでなく、術後少なくとも1年以上の長期的な網膜フォローが重要になります。

Q. 多焦点レンズを検討していますが、糖尿病がある場合は何をより重視すべきですか?

多焦点レンズは光を分けて使う特性があるため、網膜が健康なときに利点が活かされます。糖尿病(糖尿病)による網膜症や黄斑浮腫がある場合、見え方のコントラスト感度が低下し得るため、眼底検査結果を踏まえて眼科専門医と慎重に検討することが望ましいです。

An elderly patient during a consultation at an ophthalmology clinic
最後に
ここまで、糖尿病(糖尿病)の基礎疾患がある方が白内障手術を計画する際に、必ず押さえてお きたい基準を確認してきました。本記事でお伝えしたい要点は次のとおりです。

第一に、視力低下の原因が白内障単独なのか、網膜の問題を伴うのかを確認する眼底検査が、 手術判断に先行すべきです。
第二に、特定の血糖数値ひとつで手術の可否を早合点せず、全身 状態と連携診療の可否を含めて総合的な評価を受ける必要があります。
第三に、手術室を出た 瞬間が終わりではなく、術後1年間の網膜フォローが視力を守る最終関門です。

検査結果として網膜が比較的安定していれば、医療者と具体的な手術日程やレンズ選択を相談 できます。反対に黄斑浮腫などが活動性として認められる場合は、網膜治療を先行して土台を整 えることが、より安全な順序です。眼の本当の状態を把握することから安全な視力回復は始まり ますので、ひとつずつ丁寧に確認していきましょう。

出典

  • 疾病管理庁、糖尿病管理および合併症(定期眼科検診)案内資料(SSOT引用)
  • Journal of Korean Medical Science(JKMS), Trends and barriers in diabetic retinopathy screening(Korea NHANES 2016–2021), 2024
  • American Journal of Ophthalmology, Incidence and progression of DR after cataract surgery: systematic review/meta-analysis, 2025

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