お子さまの受け口(下顎前突)や顎が小さい(小下顎・後退顎)の状態は、単なる見た目の問題ではなく、顎の成長バランスのサインである場合があります。
「うちの子、笑うと顎が前に出ている気がして…」
「発音がもれてしまうことが多いのですが、大丈夫でしょうか?」

最初は単なる癖や見た目の問題に見えるかもしれません。ですが、こうした変化は、顎の骨や歯の成長のズレから起こるサインである可能性があります。
国内の研究では、子どもの約25〜30%が不正咬合を経験し、その中には成長期に治療することで外科手術を回避しやすいケースもあると報告されています[1]。
本記事では、保護者の方が見逃してはいけない 「顎の成長異常のサイン5つ」と、成長期矯正の必要性について詳しくご紹介します。
1.必ず確認したい「顎の成長異常」5つのサイン
成長期の顎矯正で大切なのは、見逃さずに早期に気づくことです。
保護者の方が少し意識するだけで、早く見つけられる代表的なサインを5つ紹介します。以下のサインが見られる場合は、専門家への相談をおすすめします。
1) 下の前歯が上の前歯を覆う「反対咬合(受け口)」

通常は上の歯が下の歯を少し覆いますが、下の歯が前に出て上の歯を覆っている場合は **反対咬合(受け口)**の可能性があります。
成長期に改善せずにいると、顎の骨が過剰に成長し、骨格性の受け口へ進行することがあります。
早期に気づき、適切に対応することで、将来的に強い受け口が目立つ状態を予防しやすくなります。
2) 前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」

麺類がうまく噛み切れない、あるいは「サ行」「ザ行」の発音が漏れやすい場合、前歯が接触しない 開咬が関係していることがあります。
原因としては、指しゃぶり、舌を前に出す癖、口呼吸などの習慣が影響している場合が少なくありません。
放置すると、噛む力が奥歯に偏って顎関節に負担がかかったり、歯の摩耗が進みやすくなることがあります。
3) 上の前歯が出ている+下の歯が深く噛み込む(上顎前突/過蓋咬合)

唇が閉じにくく口呼吸になりやすいと、歯の乾燥やむし歯リスクが高まりやすくなります。
また、下の歯が深く噛み込む **過蓋咬合(かがいこうごう)**では、歯ぐきの炎症や歯の摩耗が起こりやすい傾向があります。
これらは 顎が小さい(後退顎)傾向と関連することもあり、顔全体のバランスが崩れやすくなる場合があります。
成長期の早い段階で顎の成長をコントロールできると、見た目だけでなく機能面の改善にもつながることがあります。
4) 顔の左右差(顔がゆがんで見える)

顎が片側にずれている、顔が左右非対称に見える場合は、奥歯の噛み合わせが逆になっている **交叉咬合(こうさこうごう)**が原因のことがあります。
顎の骨が柔軟な成長期に開始するほうが、改善の選択肢が広がる場合があります。
早期に対応することで、成人後に強い左右差が目立つ状態を防ぎやすくなります。
5) 何気なく続いている「悪い癖」

頬杖をつく、片側だけで噛む、指しゃぶり、口呼吸などは、顎の成長方向に影響を与えることがあります。
特に口呼吸は、顎が後方に引かれたり、顔が縦に長く見える傾向(いわゆるアデノイド顔貌)に関係する場合があります。
「受け口は遺伝か習慣か」と悩む方は多いですが、遺伝的な傾向があっても、悪い癖が重なると影響が大きくなることがあるため、早期のチェックと癖の改善が重要です。
2.成長期矯正と成人矯正は、なぜ違うのですか?

成長期矯正が重要な理由は、「ゴールデンタイム」という言葉で説明できます。
成人矯正は、すでに成長が終わった骨の中で歯を動かす治療です。一方、成長期の顎矯正は、まだ柔軟な顎の骨の成長方向そのものをコントロールできる可能性があります。
[成長期矯正 vs 成人矯正]
| 区分 | 成長期矯正 | 成人矯正 |
|---|---|---|
| 骨の状態 | 柔軟 → 成長方向の調整が可能な場合がある | 固定 → 歯の移動が中心 |
| 手術の必要性 | 成長期治療で回避しやすいケースがある | 状態によっては外科的治療を併用する場合がある |
| 治療範囲 | 顎の成長誘導/抑制 + 歯列矯正 | 歯列矯正が中心 |
| 治療期間 | 目安:1〜2年程度 | 目安:2年以上かかる場合もある |
| 生活の質への影響 | 発音・咀嚼・見た目・自信に関わる面まで改善につながることがある | 歯列・機能の改善が中心 |
3.よくある質問(FAQ)
うちの子は、いつ最初の矯正相談を受けるべきですか?
一般的には、最初の永久歯が生え始める 6〜7歳頃が目安とされています。
ただし、反対咬合(受け口)のように明らかな顎の成長異常が見られる場合は、より早い段階で相談することが望ましい場合があります。
成長期矯正は必ず必要ですか?
歯並びの乱れが中心の場合は、成人後の矯正でも対応できることがあります。
しかし、受け口や顎が小さいなど、顎の骨格的な問題(骨格性不正咬合)がある場合は、成長期の治療が重要となることがあります。時期を逃すと、成人後に外科的な治療が選択肢になる場合もあります。
受け口は遺伝ですか?それとも癖の影響ですか?
遺伝的な影響が関係することは多いですが、指しゃぶりや頬杖などの癖が重なることで、状態が強く出ることがあります。遺伝傾向がある場合でも、早期診断と癖の改善を併行することが大切です。
矯正後にまた戻ることはありますか?
思春期に顎が追加で成長したり、親知らずが生えるなどの理由で変化が起こることがあります。そのため、治療後も保定装置(リテーナー)を継続して使用し、定期的に検診を受けることが重要です。

成長期の顎矯正は、単に歯並びを整えるだけではなく、**お子さまの将来の健康と自信につながる選択**です。 もし、今のお子さまの様子で「顎が前に出ている」「笑うと前歯が噛み合わない」などのサインがあるなら、それは単なる癖ではない可能性もあります。 ご自宅で一度、お子さまの噛み合わせをよく観察してみてください。気になるサインがあれば、ぜひ専門家に相談することをおすすめします。 お子さまの健康な笑顔を守る最大の力は、保護者の方の「早めの気づきと行動」です。
出典
- 大韓歯科矯正学会. (2022). 成長期不正咬合の早期治療ガイドライン.
- JCO Pediatric Orthodontics Review. (2021). The Impact of Early Orthodontic Intervention on Surgical Needs.
- American Association of Orthodontists. (2020). The benefits of early orthodontic treatment.
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