ゆるい入れ歯で不便を感じている場合、インプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)が代替案になることがあります。固定力、噛む力、費用負担の観点からの特徴を確認してみてください。
「昔は大丈夫だったのに、最近は食事中に入れ歯がよく外れてしまいます。」
「ぴったり合っていた入れ歯が、急にゆるくなりました。」

2021年の国民健康保険公団の資料によると、65歳以上の入れ歯使用者は100万人を超えます。その中には、入れ歯がゆるくなって食事がしづらい、歯ぐきの痛みを訴える方も少なくありません。
多くの方が「年齢のせいだから仕方ない」と考え、不便を我慢してしまいます。
しかし、ゆるい入れ歯を我慢し続ける必要はありません。入れ歯をしっかり固定し、食事や日常の快適さを取り戻す方法はあります。
今回は、入れ歯使用者が抱えやすい問題と、現実的な選択肢の一つであるインプラント義歯について、分かりやすく整理します。
1. こんな悩みがある場合は要注意

入れ歯の不便さを自己チェックできるイメージ
入れ歯使用者の半数以上が食事中の不快感を経験し、10人に3人以上が痛みまで訴えるという点をご存じでしょうか。これは、入れ歯が十分に機能していないサインかもしれません。
[入れ歯の不便さセルフチェックリスト]
- 食事中に入れ歯が揺れて、手で押さえることが多い
- 会話中に外れそうで不安になる
- 最近、歯ぐきが腫れたり、痛みやすくなった
- 発音がしにくくなり、息や音が漏れる感じがする
- 調整しても、まだ不快感が残る
このうち1〜2項目でも当てはまる場合、入れ歯がゆるくなっている、または歯ぐきの状態が変化している可能性があります。より大きな問題につながる前に、この先で説明する“根本的な対策”を検討してみてください。
2. ゆるい入れ歯を放置すると起こり得るリスク

ゆるい入れ歯をそのまま使い続けると、問題が大きくなることがあります。
- 噛む力が落ち、食事内容が偏って栄養バランスが崩れやすくなる
- 歯ぐきの骨が少しずつ吸収され、さらにゆるくなりやすくなる
- こすれによる傷や炎症が増え、歯ぐきの状態が悪化しやすくなる
研究では、入れ歯使用者の歯ぐきの骨は年平均0.4mm以上減少する可能性があるとされています。結果として、調整を繰り返しても改善しにくい“悪循環”に入る場合があります。
3. インプラント義歯が「現実的な代替案」になり得る理由

ゆるい入れ歯で悩む方の中には、インプラント治療を検討する方もいます。ただし、すべての歯をインプラントで置き換える「フルインプラント(全顎)」は、費用や手術負担が大きくなることがあります。
そこで、現実的な選択肢の一つがインプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)です。
これは、2〜4本程度の少数のインプラントを埋入し、その上に入れ歯を連結して、入れ歯の安定性を高める方法です。
- 入れ歯の揺れ・外れやすさ・痛みの原因を“固定”の面から改善しやすい
- 一般的なインプラントより少ない本数(2〜4本)で安定を目指せる
- 10年以上の生存率が95%以上と報告されている治療法とされています
4. 通常の入れ歯とインプラント義歯の違い

ここでは、特に重要な4つの観点から、通常の入れ歯とインプラント義歯の違いを比較します。下の比較表で、それぞれの特徴を整理してみてください。
| 区分 | 一般義歯(入れ歯) | インプラント義歯(オーバーデンチャー) |
|---|---|---|
| 固定方法 | 歯ぐきと顎の骨(歯槽骨)で支え、保持する | インプラントによって追加の支え・保持力を得る |
| 咀嚼力 | 天然歯の10〜20%程度 | 一般義歯に比べ、保持力・支持力が約2倍に向上 |
| 痛み/傷 | 歯ぐきへの圧迫で痛みが出やすい | 歯ぐきへの負担が減り、傷のリスクが比較的少ない |
| 管理 | 頻繁な調整・作り替えが必要になりやすい | 比較的耐久性が高く、長期使用しやすい |
固定方法
- 一般義歯:歯ぐきと歯槽骨で支え、保持する
- インプラント義歯:インプラントから追加の支え・保持力を得る
咀嚼力
- 一般義歯:天然歯の10〜20%程度
- インプラント義歯:一般義歯に比べ保持力・支持力が約2倍に向上
痛み/傷
- 一般義歯:歯ぐきの圧迫で痛みが出やすい
- インプラント義歯:歯ぐきへの負担が減り、傷のリスクが比較的少ない
管理
- 一般義歯:頻繁な調整・作り替えが必要
- インプラント義歯:比較的耐久性が高く、長期使用しやすい
まとめ:インプラント義歯は、固定力・咀嚼力・耐久性の面で、一般義歯より優れている傾向があります。
5. よくある質問(FAQ)
Q. 年齢が高くても、インプラント義歯は可能ですか?
年齢に関係なく検討できる場合があります。インプラント義歯は少数のインプラントで固定を目指すため、全顎治療に比べて身体への負担が小さいとされています。本文では、慢性疾患(高血圧・糖尿病など)が安定して管理され、歯ぐきの骨の状態が良好であれば、ご高齢の方でも安全に受けられる可能性があると説明されています。適応は精密検査と医療者の判断により決まります。
Q. 痛みや回復期間はどれくらいですか?
少数のインプラント埋入であるため、手術負担が比較的小さく、痛みや回復期間も短い傾向があるとされています。多くの方は当日〜1〜2日程度で日常生活に戻れる場合があります。術後の痛みは処方薬や冷却などで調整できるとされています。
※痛みや回復には個人差があり、状態や術式により異なります。
Q. 今の入れ歯をそのまま使えますか?
現在の入れ歯の状態が良く、口の中に適合している場合、インプラント義歯の固定装置(スナップ式など)を追加して再利用できることがあります。入れ歯を新しく作り直さずに済む場合、費用や時間の負担を抑えられる可能性があります。ただし、入れ歯がゆるい/状態が良くない場合は、新しく作製するほうが有効なこともあります。
Q. インプラント義歯も、外して洗う必要がありますか?
種類によって管理方法が異なります。
取り外しできる可撤式(かてつしき)のインプラント義歯は、ご自身で着脱してブラッシングできるため、衛生管理が行いやすいとされています。一方、ネジなどで固定する固定式の場合、ご自身で外せないため、定期的に歯科で専門的な管理を受けることが重要です。
Q. いつ治療を始めるのが良いですか?
入れ歯のゆるみが繰り返し起きたり、食事に支障が出ている場合は、早めに歯科で診断を受けることが望ましいとされています。放置すると歯ぐきの骨の吸収が進み、将来的に治療が複雑になる可能性があります。早期の診断と対応で、不便を減らし生活の質を高めることが重要です。

ゆるい入れ歯は、年齢のせいで「仕方がない」と諦めるしかない問題ではなく、十分に改善を目指せる状態です。 インプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)は、固定力と咀嚼力の向上を期待しながら、フルインプラントに比べて身体的・費用的な負担を抑えられる代替案となり得ます。 不便さを放置せず、まずは現在の状態を正確に診断したうえで、健康的な食生活と生活の質の回復につなげていただければと思います。 なお、インプラント義歯には複数のタイプがあり、適した治療法は患者さんの状態によって異なります。必ず精密検査と十分な相談のうえで、治療計画を立てることが重要です。
出典
- Emami, E., et al. (2013). The impact of edentulism on oral and general health. International Journal of Dentistry, 2013, 498305.
- Atwood, D. A. (1971). Reduction of residual ridges: A major oral disease entity. Journal of Prosthetic Dentistry, 26(3), 266–279.
- Pjetursson, B. E., et al. (2014). Implant-supported removable dental prostheses: A systematic review. Clinical Oral Implants Research, 25(6), 93–113.
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