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[要約]
白内障治療において、両眼手術の間隔を決める医学的な基準を整理します。お一人おひとりの眼の状態に応じて、より安全で精度の高い視力回復を目指す方法をご確認いただけます。

「両方の目を一度に手術することはできますか?」

An elderly patient pointing to their eye while speaking with medical staff in an ophthalmology consultation room

通院回数を減らして負担を軽くしたいと感じるのは自然なことです。ただし、目は非常に繊細な器官です。利便性よりも患者さんの安全基準を中心に考えることで、より安定した回復が期待できます。

両眼の白内障手術を計画する際、医療側がまず確認するのは感染リスクと視力の目標値です。「同じ日に両眼を手術できれば楽なのに」と期待される方も多い一方で、診療現場では、厳格な“分離手術”の手順を安全に適用できるかを最優先に検討します。国内コホート研究で示唆された傾向や、国際ガイドラインに共通する原則である無菌的な分離と早期フォローアップを基準に、慎重に判断されます。


1. 「同日両眼手術」は、実際には“同時”ではありません

An image comparing common myths vs. facts regarding same-day bilateral cataract surgery (ISBCS)

同じ日に両眼を手術すると聞くと、「両方を一度に治療する」イメージを持ちやすいかもしれません。しかし、同日両眼順次手術(ISBCS:Immediate Sequential Bilateral Cataract Surgery)は、両眼を同時進行で行う手術ではありません。片眼の手術が完全に終了した後、すべての工程を新たにセットし直して、反対眼を治療します。

これは、同じ日に2つの部屋を内装工事する状況に似ています。寝室の工事が終わったら、作業者は手を洗い、まったく新しい工具や資材を取り出します。そのうえで、隣の部屋の工事を新たに始める、という考え方です。手術室でも、使用する器具・消耗品・薬剤を徹底して分離します。

この分離工程は、術後眼内炎などの感染を防ぐための必須条件です。厳格な医療基準では、両眼を完全に分離された手術として扱うことが強く推奨されています。もし最初の眼の手術中に予期しない事態が起きた場合、2眼目の手術は別日に延期することが安全基準となります。

✅同日両眼(ISBCS)を計画する前のチェックリスト

  • 手術器具・消耗品・薬剤が眼ごとに完全に分離されているか
  • 患者、手術部位(左・右)、眼内レンズ度数を2名で相互確認しているか
  • 1眼目で問題が生じた場合に2眼目を延期する原則があるか
  • 翌日などの早期フォローアップの予定が確保できるか

2. 間隔をあけて手術することで得られる、意外なメリット

Medical staff reviewing corneal topography on a monitor with an eye model on the desk

間隔をあけて片眼ずつ手術する方法(DSBCS:Delayed Sequential Bilateral Cataract Surgery)は、当面は手間に感じられるかもしれません。しかしこの方法を選ぶと、1眼目の屈折結果を確認し、2眼目の手術計画を微調整できる可能性があります。

術前の精密検査で度数を決定しますが、眼内にレンズが安定して位置した後には、わずかな誤差が生じることがあります。間隔をあけて手術すれば、最初の部屋の工事(1眼目の手術)後に実際の屈折結果を確認でき、そのフィードバックを2つ目の部屋の工事(2眼目の手術)に反映できます。

1眼目の結果が予測とわずかに異なる場合、反対眼のレンズ度数の調整を検討します。誤差の範囲や満足度は眼の状態やレンズの種類によって異なり得ますが、全体として屈折目標に合わせるうえで役立つことがあります。そのため、屈折精度が重要な方にとっては、比較的慎重な選択肢となります。


3. 自分の眼の状態に合った手術間隔の決め方は?

An infographic comparing candidates for same-day surgery vs. delayed bilateral cataract surgery

手術間隔を決める際は、感染リスク、屈折精度の目標、フォローアップ(通院)可能性などを総合的に考慮します。他の眼疾患がなく全身状態も良好な低リスク群であれば、同日連続手術を検討できる場合があります。通院回数を減らし、視力の左右差が生じる期間を短縮できるためです。

一方、基礎疾患を伴う状況では、間隔をあけて手術するほうが安全です。患者さんごとに眼の状態や回復速度は異なるため、ご自身の条件を正確に把握する必要があります。以下の表で、全体的な推奨アプローチをご確認ください。

患者の状態および優先条件 推奨される手術アプローチ
低リスク群 / 通院負担の最小化 • 即日両眼手術(ISBCS)を考慮
• ただし、徹底した器具分離の原則が前提
糖尿病 / 網膜疾患 / 黄斑浮腫の懸念 • 間隔手術(DSBCS)を推奨
• 炎症反応および傷の回復の変動性を観察
強度近視 / 特殊レンズ(多焦点など) • 間隔手術(DSBCS)を考慮
• 1眼目の結果のフィードバックにより精度を補完
斜視の病歴 / 複視のリスク群 • 間隔手術(DSBCS)を推奨
• 両眼の視機能のバランスと脳の適応過程を確認

斜視の既往がある、または複視のリスクが高い条件では、日程をより慎重に調整する必要があります。両眼の視機能バランスが急激に変化すると、めまいが強くなることがあるためです。1眼目の回復状態を見ながら段階的に進めることが望ましいです。

結論として、手術間隔は「利便性」ではなく「個別のリスク評価」に基づいて決めるべきです。


4. 手術前に必ず確認したい安全ポイント

A medical team preparing and performing cataract surgery

安全な治療の要点は、「1日で早く終えられるか」ではありません。感染予防のための徹底した管理システムが最も重要です。同日に両眼を行う場合でも、左右それぞれに対して正しく分離されているかを、体系的に再確認する必要があります。

海外の主要な眼科ガイドラインでは、眼内レンズを2名以上の医療者が相互にチェックする手順が強調されています。どれほど標準化された手術であっても、相互確認というシステム上の安全網は不可欠です。これにより、重大な誤りを事前に防ぐことができます。

国内の大規模コホート研究データを見ると、特定の時期に同日両眼連続手術の患者群で眼内炎の発生頻度がやや高く観察されたことがあります。ただしこの研究はレセプト(請求)データに基づくため、実際の無菌分離の水準や選別基準を直接確認しにくいという限界があります。したがって国内では、低リスク群の選別、完全分離手術、早期フォローアップが安全の要点として説明されています。

✅受診・相談時に確認してみてください

  • 両眼手術の際、器具と薬剤が完全に分離されて進行されるか?
  • 眼内レンズ度数を手術室で2名以上が相互確認しているか?
  • 1眼目の手術結果に応じて、2眼目を柔軟に延期できるか?

5. 視力バランスと回復のために見落としたくないこと

An elderly patient applying eye drops

手術室での工程が順調に終わっても、真の視力回復は術後管理にかかっています。同日に両眼を治療した場合は、手術翌日など早期に眼圧や炎症を確認する予定を守ることが重要です。早期フォローアップは、眼内炎など重大な合併症予防の要です。

長距離移動が多い方や海外在住の方は、スケジュール確保に特に注意が必要です。手術当日だけ時間を空けるのではなく、数日間は経過を確認できる滞在期間が求められます。処方された抗菌薬・抗炎症薬の点眼を決められた時間に行うことは、炎症コントロールにおいて重要な役割を担います。

間隔をあけて片眼ずつ進める場合、先に手術した眼だけ視力が改善し、一時的にバランスが崩れることがあります。その結果、階段の昇り降りや夜間の移動時に距離感が普段と異なって感じられることがあります。2眼目の回復が落ち着くまで、転倒などの事故にご注意ください。


6. よくある質問 (FAQ)

Q. 手術間隔(同日 vs 間隔をあける)は、通常何を見て決めますか?

全身疾患の有無、網膜疾患などの眼科的な基礎疾患、そして感染リスクを優先して評価します。加えて、1眼目の結果を反対眼に反映する必要性(屈折目標)や、術後の早期フォローアップが可能な通院スケジュールなどを総合的に考慮して決定します。

Q. 糖尿病や網膜疾患があると、手術計画はどう変わりますか?

炎症に弱く、術後に網膜浮腫などが起こる可能性にも注意が必要です。片眼を先に手術し、回復状態を丁寧に確認する間隔手術が推奨されます。内科診療で血糖などを調整して全身状態を安定させたうえで、反対眼の日程を決めることが、より慎重で安全な進め方です。

Q. 1眼目の手術結果は、2眼目のレンズ度数に影響しますか?

はい、影響する可能性があります。事前検査で度数を計算しますが、実際の眼内構造によってわずかな誤差が生じることがあります。間隔をあけて行うことで、1眼目の結果を踏まえ、2眼目の眼内レンズ選択時に屈折精度を調整できる場合があります。

Q. 術後はいつまで、どのような症状があればすぐ病院に連絡すべきですか?

術後直後から1〜2週間は、眼の変化に最も敏感に対応すべき時期です。急に視力が目立って低下した、我慢しがたい痛みがある、急激な充血が出たといった場合は、ためらわずにすぐ医療機関へ連絡し、指示に従って受診してください。

An elderly patient receiving a consultation in an ophthalmology examination room
最後に
白内障の両眼治療における時期と間隔は、患者さんの眼の状態、基礎疾患、そして術後に目指す屈折精度を総合的に把握して決める重要な医学的プロセスです。

ここまで整理した原則を基準に、医療スタッフと十分に相談していただければ、ご状況に合った合理的な選択が可能になります。丁寧に立てられた安全な治療計画を通じて、クリアで見やすい視界を長く快適に保てることを願っております。

出典

  • 疾病管理庁、医療関連感染 標準予防指針、2021
  • 大韓眼科学会誌、「両眼白内障同時手術と順次的両眼白内障手術の有用性および安全性比較」、2023
  • Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology, Recent trends and outcomes in immediate and delayed sequential bilateral cataract surgeries: a nationwide cohort study in South Korea, 2025

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