POINT

この記事でわかること

糖尿病の方は、血糖コントロールの状態や代謝の変化により、若い年齢でも水晶体の混濁が起こる「糖尿病性白内障」のリスクが高いとされています。単なる白内障・老眼だと思って受診を先延ばしにすると、網膜の合併症まで見逃してしまう可能性があるため、包括的な眼科評価が重要です。本記事では、視力低下の原因を正確に見分けるポイントと、手術前に行う精密検査の考え方を整理します。

1. 糖尿病があると白内障は早く起こりますか?

An infographic showing the increased risk of cataracts in diabetic patients

糖尿病の方は高血糖の影響により、糖尿病ではない方に比べて白内障が早期に起こるリスクが高いとされています。1型糖尿病では進行が速い「真性糖尿病白内障(雪片状混濁)」が、2型糖尿病では「後嚢下混濁」タイプの加齢性白内障が比較的早期からみられることがあります。  

高血糖が続くと、アルドース還元酵素の作用でソルビトールが蓄積し、浸透圧の影響で水晶体が腫れ(含水/水和)、混濁が進みやすくなります。

ただし、罹病期間が長いほど、またHbA1c(糖化ヘモグロビン)の変動幅が大きいほどリスクが高まるため、丁寧な診断が必要です。  


2. 40〜50代の糖尿病患者さんの「かすみ目」が白内障・老眼だけではない理由

An image illustrating multiple causes of blurry vision in people in their 40s and 50s

40〜50代の糖尿病患者さんの見えにくさは、白内障・老眼、白内障、糖尿病黄斑浮腫、糖尿病網膜症の症状が同時に重なることがあり、ご本人だけで原因を正確に見分けるのは困難です。そのため、症状だけで自己判断せず、精密検査によって原因を正確に鑑別することが重要です。

✅主な視力障害の原因別:症状の特徴

  • 白内障・老眼:水晶体の調節力が低下し、主に近くの文字や物が見えにくくなる  
  • 糖尿病性白内障(後嚢下混濁):視界全体がかすみ、夜間の光のにじみ(グレア)が出やすい。瞳孔が小さくなる明るい場所で視力がより低下し、近距離の読書が特につらくなる
  • 糖尿病黄斑浮腫:視野の中心がかすむ、物や線がゆがんだり曲がって見える(変視)などが起こり、視力に大きく影響する  
  • 糖尿病網膜症:細い血管が障害される病気で、自覚的に「視力は正常」と感じていても内部では静かに進行することがあるため、眼底検査での丁寧な観察が必須

3. 糖尿病患者さんが定期的に受けるべき推奨検査

2型糖尿病の方は診断時点から、1型糖尿病の方は診断後5年以内に、散瞳眼底検査を含む包括的な眼科検診を開始する必要があります。特に糖尿病網膜症は妊娠中に悪化する可能性が高いため、妊娠前または妊娠初期に検査し、妊娠期間中も継続的な経過観察が推奨されます。

  • 基本の受診間隔:網膜症所見がなく血糖が安定している場合は、年1回のフォロー、または1〜2年間隔で調整します。
  • 異常所見がある場合:網膜の微小血管障害や視力低下を伴う場合は、検査間隔を短くして集中的に経過を確認します。
検査の種類および部位 検査目的
細隙灯顕微鏡検査
(前眼部)
水晶体の混濁度の確認、および眼圧測定・虹彩観察による新生血管緑内障の早期発見
散瞳眼底検査
(後眼部)
散瞳薬で瞳孔を拡大し、糖尿病網膜症などの微小血管損傷の有無を観察
光干渉断層計(OCT)検査
(黄斑部)
糖尿病黄斑浮腫の発生および網膜構造の変化を断層画像で精密に評価
蛍光眼底血管造影(FAG)検査
(網膜全般)
網膜の虚血状態および新生血管発生の有無を精密に評価

4. HbA1cが高いと白内障手術はできませんか?

HbA1c(糖化ヘモグロビン)が一時的に高いからといって、白内障手術が一律に不可能というわけではありません。HbA1cは直近2〜3か月の平均血糖を反映し、長期的な合併症リスクを評価する重要な指標ですが、この数値だけで手術の可否を早急に決めることはしません。

手術のためだけに急激に血糖を下げると全身状態に負担がかかることがあるため、内科との連携(併診)で安定した血糖コントロール計画を立てることが大切です。白内障手術は点眼麻酔で10分前後に行われ、日帰りであるため、長時間の絶食が不要なケースが多いです。ただし、糖尿病の方は術後の感染や炎症リスクが相対的に高いため、処方された抗菌薬・抗炎症薬の点眼は指示どおり、より確実に行う必要があります。


5. 白内障手術の前に網膜の状態を先に確認すべき理由

A cross-sectional eye diagram highlighting the retina and macula

水晶体を置き換えても、眼球の奥にある網膜や黄斑に病変が残っている場合、期待できる視力回復が制限されることがあります。糖尿病網膜症や黄斑浮腫がある場合は術後に悪化するリスクがあるため、精密検査のうえ、必要に応じて注射やレーザー治療で黄斑を先に安定させることが重要です。  

特に糖尿病網膜症を伴う場合は、「回折型多焦点眼内レンズ」の選択は慎重に検討すべきです。すでに低下しているコントラスト感度をさらに下げる可能性があり、将来的に網膜疾患が進行すると、多焦点の利点が得られず不便さだけが残ることがあるためです。また、今後網膜レーザーや注射、手術治療が必要になった際に、眼底観察の視野を妨げる可能性もあります。単焦点、連続焦点(EDOF)、モノビジョンなどを代替案として医療者と相談するほうが安全です。


6. よくある質問(FAQ)

Q. 最近、視界がかすんでまぶしいのですが、白内障・老眼と糖尿病性白内障はどう見分けますか?

自覚症状だけで両者を正確に区別することはできません。白内障・老眼は近方のピント障害が中心ですが、糖尿病性白内障は視界全体のかすみやまぶしさを起こしやすいため、細隙灯顕微鏡検査と眼底検査で鑑別します。

Q. 糖尿病と診断された後、散瞳眼底検査はいつから、どのくらいの頻度で受けるべきですか?

2型糖尿病は診断後すぐに初回検診を受け、1型糖尿病は診断後5年以内に開始します。特別な異常が見つからない場合でも、年1回の定期検診を受けることが眼の合併症予防につながります。

Q. 糖尿病患者さんが白内障手術の前に内科併診が必要なのはなぜですか?

HbA1cという単一の数値だけでなく、腎疾患や心血管の状態など全身合併症の有無、感染リスクを確認する必要があるためです。内科併診で安定した血糖コントロールの方針を確立することが、術後の安全性につながります。

Q. 手術前に黄斑浮腫が見つかった場合、白内障手術はどのように進めますか?

黄斑浮腫が確認された場合、白内障手術をすぐに行うのではなく、注射やレーザー治療を優先します。黄斑組織を安定した状態に整えてから白内障手術を行うことが、視力を守るうえで重要です。

本医療コンテンツは医療専門家による監修のもと、国内外の信頼できる情報源を取りまとめて作成されており、最新の診療ガイドラインに基づき定期的に更新されています。

最終監修日:2026年9月11日 最終更新日:2026年9月11日

出典

  • 大韓糖尿病学会、『2023 糖尿病診療ガイドライン』、2023.
  • 韓国看護科学会, Incidence and Predictors of Cataract among People with Type 2 Diabetes Mellitus (Journal of Korean Academy of Nursing), 2022
  • Zarei-Ghanavati et al., “Cataract and diabetes: Review of the literature,” *J Cataract Refract Surg*, 2024.

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