POINT

この記事でわかること

糖尿病(糖尿病)の患者さんが突然、深く速い呼吸になったり、意識がはっきりしなくなったりした場合は、緊急事態の警告サインです。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧状態(HHS)の違い、家族(介護者)が確認すべき症状、119搬送前の対応を整理します。

1. 糖尿病の緊急事態はなぜ起こるのですか?

An illustration depicting a diabetic medical emergency

糖尿病の緊急事態は、インスリン不足や感染症などをきっかけに、体の代謝調整機能が急に破綻して起こることがあります。代表的な病態は、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高血糖高浸透圧状態(HHS)です。

✅2つの緊急事態の違い

  • 糖尿病性ケトアシドーシス:ケトン体が蓄積して血液が酸性に傾き、嘔吐・腹痛に加えて、深く速い呼吸が目立ちます。
  • 高血糖高浸透圧状態:著しい高血糖により水分が大量に失われ、強い脱水が起こり、意識が徐々に低下することがあります。

高血糖高浸透圧状態では嘔吐がはっきりしない場合もありますが、脱水と意識低下がより速く進行することがあります。いずれも遅らせずに救急外来(救急診療)を受ける必要があります。医療機関では、点滴(静脈補液)、インスリン投与、電解質補正を行いながら、誘因の確認も進めます。


2. 果物のような息・息が上がる呼吸はなぜ危険なのですか?

果物のようなにおい、またはアセトン臭がする呼気と、深く速い呼吸は、ケトアシドーシスを疑う警告サインになり得ます。インスリンが不足すると、体はブドウ糖の代わりに脂肪を利用し、その過程で生じる酸性物質であるケトン体が血液中に蓄積します。

体が血液の酸性度(pH)を調整しようとして深く速く呼吸する状態を、クスマウル呼吸(過換気)と呼びます。胸やお腹が大きく上下する荒い呼吸や、傷んだ果物のようなにおいがみられることがあります。

このような呼吸の変化を、単なる疲れとして見過ごしてはいけません。嘔吐や腹痛を伴っていないかも確認しつつ、家庭で様子を見て時間を過ごすのではなく、速やかに救急外来へ向かう必要があります。


3. 意識低下と強い脱水にはどう対応すればよいですか?

An image demonstrating how to respond to altered mental status and severe dehydration

糖尿病の患者さんが周囲の人を認識できない、返答が遅い、意識がぼんやりしているといった状態があれば、ためらわずに119へ連絡してください。重度の高血糖で尿量が増えると、水分と電解質が一緒に失われます。血液が濃くなり、脳細胞を含む体の細胞からも水分が引き出されることで、重度の脱水が進行する可能性があります。

口の中や舌が強く乾く、皮膚をつまんで離しても元に戻りにくいといった所見も脱水のサインです。日付や周囲の人がわからなくなったり、つじつまの合わない発言が出たりすることもあります。高齢の方は喉の渇きを感じにくい場合があるため、ご家族(介護者)の観察が重要です。

このとき、「水だけを口から繰り返し飲ませる」方法で解決しようとすると、低ナトリウム血症や脳浮腫などの危険な状況につながるおそれがあります。呼吸と意識の状態を確認しながら救急外来へ搬送し、点滴治療などを受ける必要があります。


4. SGLT2阻害薬を服用中で血糖が正常なら大丈夫ですか?

SGLT2阻害薬を服用している患者さんでは、血糖が正常に近くてもケトアシドーシスが起こることがあります。この薬は尿中にブドウ糖を排泄して血糖を下げるため、血液が酸性に傾いている最中でも、血糖測定器の数値が極端に高くならない場合があります。これを正常血糖ケトアシドーシスと呼びます。

炭水化物摂取を過度に制限したり、長時間の絶食が続いたりしたときに起こることがあります。重い感染症、大きな手術、外傷、妊娠など、体に強い負担がかかる状況も原因になり得ます。そのため、血糖値だけを見て「危険ではない」と判断してはいけません。

強い倦怠感、嘔吐、腹痛、過換気がある場合は、医療機関でケトンの評価を急ぐ必要があります。ケトアシドーシスが疑われる症状が出た場合は、SGLT2阻害薬の服用を中止し、救急外来で評価を受けてください。


5. 救急外来へ行く前に絶対にしてはいけないこと

An infographic visualizing 3 essential response rules during a medical emergency

意識がはっきりしない患者さんに、砂糖水や飲料、食べ物、薬を無理に飲食させたり、インスリン量を自己判断で増やしたりしてはいけません。嚥下機能が低下している状態で飲食させると、食べ物や飲み物が気道に入って窒息や誤嚥性肺炎を起こすおそれがあります。

強い脱水状態でインスリンだけを追加すると、低血圧ショックや電解質異常のリスクも高まります。特にカリウム値が急激に低下すると心停止につながる危険があるため、医療機関で点滴と電解質補正を併せて受ける必要があります。

嘔吐がある場合は、吐物で気道が塞がれないように顔を横に向けて寝かせます。服用中の糖尿病薬、最後にインスリンを投与した時刻と直近の血糖値も整理し、救急隊へ伝えてください。搬送の判断は血糖値だけでなく、意識低下、深く荒い過換気、続く嘔吐や腹痛といった症状を合わせて行う必要があります。


6. よくある質問(FAQ)

Q. 血糖がいくつ以上なら119を呼んで救急外来へ行くべきですか?

血糖値だけで搬送を決めてはいけません。数値にかかわらず、意識がぼんやりする、深く荒い過換気がある、嘔吐や腹痛が続くなど全身症状を伴う場合は、ためらわずに119へ連絡し、救急外来で評価を受けてください。

Q. 患者がずっと意味の通らないことを言ってぐったりしているとき、温かい砂糖水を飲ませてもよいですか?

意識が明瞭でないときは、砂糖水を含め、いかなる飲み物も口から飲ませてはいけません。嚥下機能が低下した状態で無理に飲ませると、肺に流入して窒息や誤嚥性肺炎を起こし、非常に危険です。

Q. 病院へ行く前に、家でひとまずインスリン量だけ増やして打ってはいけませんか?

重度の高血糖の緊急事態は重い脱水を伴うため、点滴による補液なしにインスリンだけを自己判断で増やすと、循環血液量が不足してショックに陥るおそれがあります。また、電解質であるカリウム値が急低下して心臓に負担がかかる可能性があるため、救急外来で補液と電解質補正を同時に受けることが安全です。

Q. SGLT2阻害薬を服用中です。血糖が180mg/dLですが、嘔吐や息切れがあっても救急外来へ行くべきですか?

はい。これらの症状がある場合、血糖が極端に高くなくても直ちに救急外来で評価を受けてください。SGLT2阻害薬の服用中は、ケトン体が蓄積して血液が酸性化する「正常血糖ケトアシドーシス」が起こることがあります。嘔吐・腹痛・息切れ・普段と違う強い疲労感などの疑わしい症状が出たら、血糖がさらに上がるのを待たないでください。SGLT2阻害薬の服用を中止し、速やかに受診してください。

本医療コンテンツは医療専門家による監修のもと、国内外の信頼できる情報源を取りまとめて作成されており、最新の診療ガイドラインに基づき定期的に更新されています。

最終監修日:2026年10月19日 最終更新日:2026年10月19日

出典

  • 大韓糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン』、2023年
  • ソウル峨山病院(Seoul Asan Medical Center)『疾患百科:DKA』、2014年
  • 大韓糖尿病学会『IV→SCインスリン移行研究』Journal of Korean Diabetes、2018年

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